瀬戸川に落っこちてしまったトホホな夜
昨夜、瀬戸川に落っこちてしまった。
瀬戸川とは飛騨古川の象徴ともいえる美しい用水路で、白壁の土蔵や神社を背景にして春から秋は錦鯉が優雅に泳いでいる。その、瀬戸川に、文字通りドブンと落っこちた。
いや実は、この町に引っ越してきた当初から、ずーっと冗談では言っていた。いつか酔っぱらった帰り道に瀬戸川に落っこちそうだわ、なんて。でもまさか、本当に落ちちゃうとは…。
(これが瀬戸川沿いの散歩道)
ことは昨夜9時半頃、北海道遠征中で不在のT氏に代わり、2匹のグレピ達の夜散歩をさせていたときに起きた。瀬戸川脇の土の道はこの子たちのお気に入りコースで、夜はほぼ人通りもないのでいつものように歩かせていた。と、前から高校生と思しき若い男子2人が歩いてくるではないか。狭い道なので大型犬2匹と男性2名がすれ違うのは難しいと思い、咄嗟に、川の上にかかっている小さな橋状の場所に2匹を連れて避難した。彼らが川沿いの道をそのまま行き過ぎてくれれば何も起きなかったはず…なのだが、そのうち1人が何を思ったか、いや多分ワンコ好きなんだろうが、わぁ~と言いながらワンコに向かってひょっと手を出したのだ。

(こちらは明るい時間の2匹のお散歩)
が、2匹のうち1匹は超神経質なデビッド。人も車も大の苦手な彼のため、わざわざ人通りのない9時半に散歩させていたのに、こともあろうかそのデビッドめがけて手を出してくれちゃったものだから、デビッド君パニックになって足を滑らせ川の中に落ちてしまった。そしてデビッドに引っ張られ、あれれ~って感じで私も横倒しに川にドボン!もう1匹のジャックはこの3人の中で一番体重がある子だから、なんとか踏ん張って落ちずに済んだ。
手を出した男の子は大慌てで「ごめんなさい!!!」と我々を引っ張り上げてくれたが、私とデビッドは真冬の川に落ちて全身ずぶぬれ。しかも、引き上げられたときには、持っていた散歩バッグもかけていた眼鏡も何もかも、リードとワンコ以外はなくなっていた。てか、こんな状況でもワンコのリードだけは必死に手放さなかった自分を今更だけど褒めてあげたい…。
運悪いことに散歩バッグにはスマホと財布も入っていて、でも視力0.05以下のド近眼の私は眼鏡なしでは何も見えない。なにも見えないよぉ~とおろおろする私を見て、すかさず男の子が川に入ってくれスマホはすぐ見つかった。が、財布は20mくらい下流まで流されていてなかなか見つからなかった。残念ながら、眼鏡は夜の真っ暗な川底から探すのは困難で、1年前に大枚はたいて買った私にしては高級眼鏡だったので悲しくてたまらなかったが、それよりなにより零℃近いなかで全身ずぶぬれ&泥まみれ状態でこれ以上はもう無理と思って、とりあえず互いの連絡先だけ交換して帰宅した。お風呂を沸かし、その間にデビッドを拭いて乾かして、熱い風呂に浸かってようやく人心地ついたのが夜10時半頃。
くたくたになって泥のように眠って、早朝、外が明るくなったのを待って、また2匹を連れて散歩しながら川の中に眼鏡とバッグがないか探してみた。でも、この時期は融雪のためか水流が増えている時期で流れも速く、こりゃ無理だ…と諦めて帰宅した。それでもなんとなく諦めきれず、昼頃に雨が止んで晴れ間が出ていたので、もう一度、今度は犬なしで自分だけで探してみようと瀬戸川に戻り、そしてなんと!眼鏡を見つけた。私が落ちた場所からほんの1,2m下流にあった。分厚いレンズの重みでか、流されずに済んだらしい。川底から眼鏡を拾うため走って帰宅して火ばさみをもって現場に戻ると、なんとそこには昨夜の男子2人が。お互いに、あ!と顔を合わせて「眼鏡ありましたね!!」と喜びあった。よかった…ほんとよかった…。その子もホッとした顔で何度も何度も謝ってくれた。

(お気に入りの眼鏡、戻ってきてくれてありがと!)
夕方、彼は仕事終わりのお母さんと菓子折り持ってうちに再度謝りに来てくれた。うん、ワンコが好きだからつい手を出しちゃったんだよね。でもね、色んなワンコがいるし、飼い主に許可とらずに勝手に触るのはNGだよ。だって、それ、もし人間だったらどう?まったく知らない人が勝手に可愛い~とか言って自分に(あるいは自分の子供に)触ってきたらどう??あり得ないよね?変質者だよね?犬にとっても同じだよ。自分ちのワンコだって、その子の気分を無視して勝手に触ったりしないもんだよ…と、そんなお説教をしたかったが、口下手な私にどこまで出来ただろうか…。
今回の一件、T氏には対応が甘すぎるとめっちゃ怒られてしまったが、でもね…自分の息子よりさらに若い、しかも瀬戸康史君似の素直そうな顔した高校生が必死に謝ってザブンと川に入って探し物してくれたら、やっぱりそんなふうには怒れないよ…たぶん男子を育てたことある母親ならこの気持ち、分かってくれるんじゃないかなぁ…。しかしほんとに素面で瀬戸川に落ちちゃうとはね。サザエさんを通り越して、ほとんどギャグ漫画だね、自分。
また一つ歳を取った話
先週、54歳になった。また一つ歳を取った。高校生の頃、54歳なんて想像つかないくらいすんごい大人だと思っていたけど、実際になってみると、高校生の頃と土台はほとんど変わってない。ショートケーキでいえば、1番大事なスポンジ部分は殆ど当時のままで、まわりのクリームだとか苺とかが少し変わったよね、ってそんな感じ。
さてさて、近頃ブログもインスタも更新できなくなっていて、何人かの方々より優しい心配の声を頂いていたりした。ご心配をおかけして本当に申し訳ありません!そして、こんな拙いブログをちょこちょこ覗きに来て頂き、本当にありがとうございます!嬉しくて嬉しくて力が湧いてきます!
実は、前々回のブログに書いたように、2月頭にお互いの覚悟を決めてからというもの、T氏が仕事に突き進む勢いたるや凄いもので、例えるなら猛スピードで道なき道を突き進んでゆく四輪駆動のトラック?或いはブルドーザー?そんな感じ。なので、私はとにかく振り落とされないよう必死に助手席にしがみついてるのが精一杯の毎日で…。そんな日々がかれこれ1ヶ月続いてて、その間には全員で都内に戻ったり、戻った瞬間に私がまた発熱して2日寝込んだり、それが明けたら事業計画を作って銀行やら知的財産の打合せやらが続き…そして、たぶんこの先の一年、いやたぶん三年くらい、こんな感じの怒涛の日々が続くのかもしれない…と思い始めている。
とにかく、振り落とされないようしがみつきながら、でも、隙を見てじわりじわりと自分のシートまわりだけでも自分らしく居心地良くカスタマイズしなきゃと思っている。自分らしく、これ大事。T氏はT氏で彼らしく。私は私で私らしく。お互い54歳なので、そうそう土台のスポンジケーキの配合は変えられない。でも、元はと言えばお互いに、その土台が素敵だな、美味しいな、と思って一緒のプロジェクトに取り組んでいるんだから、もうここは腹を括ってついていくと決めている。ただ、しがみつくのに必死でなかなか配信できないかもしれないので、DAY〜〜型式は前回でお終い。今後は隙を見てちょこちょこと書いていきますので、これからもどうか応援よろしくお願いします!


(写真は先月都内で友人と過ごしたひととき)
DAY132-135 カレー屋さんでの出会い(市長さん編)
今日、古川町のすてきなカレー屋さんを初訪問し、そこで大きな出会いがあった。前から行きたいなと思っていた「印度飯店」さんのランチ。バターチキンカレーとダルカレーの相がけにパパドとアチャールが乗っかってる。ぅんまい!私もT氏もインドカレーが定期的に食べたくなる。でも、お店によっては油ギトギトだったり塩味強すぎたりで50代の胃には結構きつかったりする。でも、こちらのカレーはスパイシーで旨味たっぷりなのに、不思議と胃に優しい。食後に喉が猛烈に乾くこともない。これは定期的に食べたくなっちゃう味だ♪

2人でうまうまと食しつつ、星座占いプロ級のT氏が店主さんのお悩み相談などしていたら、そこにふらりといらした1組のご夫婦。どうやらお隣のカレー屋さんでランチした後(なんとこの古川町には本格的なカレー屋さんが2軒隣り合って存在しているのだ!ちなみにお隣のカレー屋さん にも行きたいのにまだ行けていない!)こちらにも軽くご挨拶に見えたらしい。常連さんぽいなとチラリ振り返ってみたら、なんと市長さんと奥様ではないか。ひえ~~~!これはまた大事件の予感!
実は、奥様には引っ越してきて早々にご近所のよしみでご挨拶や立ち話をさせて頂いたことがあったが、市長さんとお会いするのは今日が初めて。突然、私とT氏の間に、緊張の糸がピンと張りつめる…だって先月の市役所騒動のこと、市長さんは絶対ご存知のはず。とにもかくにも、「弐之町に移住してきた何某と何某です」と名前を名乗った。すると、市長さんもすぐに「ん!?」となにか気付いたお顔に…。はい、そうです、あの騒動の当事者です…秘書さん方からお聞きになってますよね…。さすがだったのは、すぐにニッコリと微笑まれ「ここでの暮らしはどうですか?」と声かけてくださったこと。
その言葉を聞くや否や、T氏は獲物をロックオンした猛禽類のような目つきで「いや~、さんざんですよ!」と不敵な笑みをもって答えた…。緊張の糸がプチンと切れ、今度は嫌な脇汗をかき始める私。え?なにを言い出すの?ここでまた騒動の続き、やっちゃうの? ところが、T氏は市役所騒動には一切触れず、弐之町通りの車の速度問題について猛烈な勢いで語り始めた。
私達の家のある弐之町通りは古い町並みの一角にあり、昔ながらの商店街でもある。が、速度制限がない2方向通行で、かつ高山市への抜け道として使われている旧街道の一部でもあるため、朝夕の通勤時間帯はかなりのスピードで駆け抜けていく車が多い。制限速度がないということは、つまり時速60キロ出して良いってことで、お年寄りや子供が歩いていても雪かきしててもお構いなし。うちなんてワンコが轢かれてしまいそうでいつも冷や冷やしている。
なんでこんな町中をスピード出して我が物顔で走り抜ける車を放置しているのかと、引っ越してきた当初から憤慨していたT氏は、昨年、ご近所の方達に声をかけて歩行者天国をやろうと持ち掛け、警察署に相談に行ったりして計画を進めていた。その最中に、弐之町通りの一角で車3台が追突がするような大事故も起きたりして、これは由々しき問題だ!と町内の有志で話し合ったりしていた。そのことをお会いしたばかりの市長さんに直談判始めたのだ。さ、さすが…。口調や言葉遣いは乱暴で攻撃的に聞こえるけれど、訴えている内容はしごく当たり前のこと。海外の歩車分離やボンエルフのような歩車共存政策についても触れて、ガンガンと持論を畳みかけてゆく。
T氏の訴えを聞き終えた市長さんは、「確かに60キロというのは危険ですね、警察と相談し検討します」とまたもニッコリ微笑みながら約束してお店を出てゆかれた。これは…これは…もしかしたらすごい出会いだったんじゃないの?
(長~いお話になりそうなので、続きはまたの機会に…)

DAY 121-131 ついに覚悟が決まったぞ、というご報告
今月に入って、また色んなことが起きて、移住当初の計画から結構大きな計画変更をすることにした。具体的なことはおいおい書いていくのでほんのさわりだけ書かせて頂くと、いま改修しているY物件の使用目的をカフェではなく、事務所兼アトリエ兼ショールームのような形にすることにしたのだ。

もともと、古川町のこの物件に出会ったときから将来的にはそうしたいねと話し合っていた。でも、町の中心部に位置していて場所が良いためB to B的な使い方だけではもったいない…と考えたのと、あと、一番大きかったのは「覚悟が決まっていなかった」からだと思う。
でも、2月になって早々にちょっとショッキングなことが起きたのをきっかけに、互いにもう一度初心に戻って考えた。自分達が本当にやりたいことはなんなのか?なんでこの飛騨古川の地にいるのか? 少なくともT氏にとってそれはカフェをやるためではなかった。彼がやりたいのは「今はまだない、しかしあれば誰かが助かるような物を創ること」。では、私は…?
お互いもう50代半ば。残された時間は恐らくせいぜい10〜15年。限られた時間と体力とお金を有効活用するためには、どこか一点に集中させるべきではないか?失敗を恐れずにその一点に集中して突っ走ってみたらどうか?
そう話しあったのが、ちょうど2月に入った節分・立春のあたり。そして、お互い覚悟を決めてからはまぁとにかく早かった。今週は毎日すごい勢いで製材所や木材の乾燥や加工の専門業者さんや建具屋さんをまわっている。私もT氏も、どちらももう逃げ道はない。とにかくやるんだ。そんな覚悟がようやく決まったぞ!という重大な、でもなんだかばっくりしたご報告。さて、なんの覚悟なのかは、またここで書いていこうと思ってますので、これからもどうぞよろしくお願いします♪

DAY113-120 散々な誕生日
先日T氏がめでたく誕生日を迎えて54歳になった。誕生日なのでなにか2人で美味しいものを食べて、外で飲んでお祝いしたいと考えていたのだけど、私の図面作成が遅れに遅れていたり、T氏の体調がまだ本調子ではなかったりして、当日は結局どこにも行けなかった。その代わりに本人リクエストで翌日富山のお寿司屋さんに行ってきた。富山までドライブし、町歩きして美術館に行ったり、本屋さんで心ゆくまで情報収集したりして、久々にリラックスして楽しく過ごせた。

思えばほんと散々な誕生日当日だった。図面にテンパる私を気遣い夕食は簡単で良いと言ってくれたT氏に、こともあろうか薄くて不味いカレーを作ってしまい、図面はおろかカレーすら満足に作れない…と謎の自己嫌悪でメソメソしたまま1日を終える羽目になったりして。
MBTI性格診断によると、私はINFJ(提唱者)らしい。INFJタイプの特徴を要約すると、「物事の本質を見抜く力がある/他人の気持ちを理解する能力に優れている/理想主義的な考え方で、粘り強く目標に向かって努力する性格/頑固でマイペース/人間関係に消極的で自分の意思を伝えることが苦手/メンタル的に打たれ弱い」…ということらしい。合っている、すごく合っている気がする、特に最後の3つは間違いなく合っている。
なんでMBTI診断のことなんて書いたかというと、ここのところ自分のメンタルがジェットコースターみたいに上がったり下がったりすることがあって、それが何と連動しているかというと年始からいまいち本調子でないT氏の体調とシンクロしていると思われるからなのだ。
でも、肝心のT氏は…といえば、先日、本人からこんな画像が送られてきたのだが、これ、性格診断ではINTP(論理学者)であるT氏にとってのストレスフルなシーンを表わしているらしい。

つまり、効率優先で感情は二の次なT氏に対して、メンタル豆腐で他人の気持ちに左右されやすい私という、言わば水と油の人間が2人して共同生活している…と、まぁそんな感じなんだな。
そりゃ誕生日だって多少ギクシャクもするはずだ。そもそも記念日大好きな私と、そんなんどーでもいいってT氏だし…そう考えると、散々な誕生日だったけど、まあまあ持ち直せたのかな。そういうことにしておこうかな。
DAY103-112 T氏、倒れる
1月12日に東京から飛騨古川に戻ってきて、あっという間に1週間経っていた。この1週間はなかなかヘビーだった。
なにせ12日は大雪の上高地~平湯間の走行を避けて、東名道~東海北陸自動車道経由で大回りで帰ってきたので相当疲れていたはずなのだが、翌日は朝から母屋の屋根の雪下ろし。

その夜はご近所さんと焼き肉の約束。久々の焼き肉だ、やっほーい!と張り切って雪かきしていたのだが、集合時間の30分前にT氏が突如発熱してダウンしてしまうという…。あれ?なんかこの既視感…。T氏の熱はみるみるうちに上がっていき、息も絶え絶え…。これ完全に年末の私と同じ状態だ。寒気と熱と関節痛で弱り切ったT氏の看病と1日3回のワンコ達の散歩に明け暮れているうちに、T氏は持ち前のガッツと体力でなんと発熱から4日目には病床から起き上がってきて今度は蔵の屋根の雪下ろしを強行してしまう…。しかもその翌日17日には電動コンクリートハンマーを使って床ハツリ工事まで始めてしまったではないか。

病み上がりですよ?てかまだ具合悪そうだし無理しないで寝てと諭しても、寝てても歯が痛くてしんどいから動いてる方がいい、と言って結局夕方までずっと働いてしまう。どうやら発熱時の免疫低下により、普段は悪さしない歯痛が復活してしまったらしい。そういえば、前にも「体調が悪くなると歯痛が起きるんだ」と言ってた…。それにしても今回の歯痛はすごくて、顔の右側だけがおたふく風邪のようにぷっくりと腫れている。せっかくのイケメンが台無し。
しかも無理が祟って細菌感染したのか熱まで出てきて、ついにT氏は再ダウンしてしまった。なんなら13日の高熱時より苦しそうで、鎮痛剤なしでは眠ることすら出来ない様は傍で見ていてもつらい…。食べることも話すこともろくにできないきっつい状態が2日程続き、こちらも不安でやられそうになっていたが、やっと今朝になって食欲が戻り会話もできるようになってきた。よかった…。
病気のパートナーを看病する…そういうしんどさ、しばらく忘れていた。そうだった。結構きついやつだった。苦しくて苦しくて自分の痛みで投げやりになっている相手の言葉にいちいち反応したり傷ついたりすること…あぁ、あったな。どうやってやり過ごすんだっけ? 嫌な想像して不安がマックス状態になってしまうとき、どうやって気を晴らすんだっけ?
この1週間、時間がないわけじゃないのにインスタもブログもあまり書く気になれなかったのは、どうやらそういう「気」に自分もヤラレテしまっていたかららしい。でも、たぶんもう大丈夫。だって、これ、前にも経験したやつだもん。今の自分は、前よりも少し強くなっているだろうし、少しは賢くなっているだろうから、たぶん大丈夫なはず。うん、そんな気がしてきた、がんばろう。

DAY100-102 プレ成人の日を祝ってきた
今回の帰省の目的の一つである、息子との記念日ご飯に行ってきた。成人の日のお祝いだから何処がいい?と聞いたら「お寿司がいいな」と。うん、きっとそう言うだろうと思ってた。
彼が5〜6歳の頃から年1回行くお寿司屋さんがある。もともとは私が小さな頃から何かの記念日などに父や祖母に連れてってもらっていたお寿司屋さん。この15年くらいは毎年私の誕生日になると息子と2人でカウンターに座り、お任せで握ってもらうことにしていた。息子が大学に入学した日には父母を誘って4人で行ったっけ。特別な高級店ではないけれど、息子と2人で白木のカウンターに座り、旬の魚や貝をつまみに熱燗を飲み、その後お好みで握ってもらうのは、私にとっては身の丈よりちょっと背伸びした特別なことで、いつも少しだけ緊張してしまう。でも、息子にとっては年1回のこの特別な食事はわりと有意義なものと思ってずっと続けている。小さい頃は好き嫌いが多かった息子だけど、この店に来るようになってから貝も牡蠣もキノコも銀杏も美味しく食べられるようになっていったし、白子なんて今じゃ大好物になっちゃった。大人と一緒にカウンターに座って、大人と同じように一人前に扱ってもらえることが、きっとなによりの食育なんだなと、普段よりやけに神妙な顔で隣りに座る幼い横顔を見て感じていた。
このお店が好きな理由の一つはカウンターに常時4~5人いる職人さんの顔ぶれがこの15年間ほとんど変わらないこと。そのせいか、年1回しか訪れない我々のことを、どの職人さんも覚えていてくださり、この数年は「大きくなったね!」「もう一緒に飲めるようになったの?良かったね〜」と息子の成長を喜んでくださる。それが嬉しくて、自分の誕生日に息子とこの店に来るのが一年一度のささやかな楽しみになっていた。今年はたぶん自分の誕生日の3月には帰って来れるか分からないし、成人式に出ない(…と私と全く同じ選択をしてる)息子に何かお祝いらしいことをしたくて、彼が免許の合宿に行ってしまう前のこのタイミングで行くことにした。
行って良かった。家族のこと今のことこれからのこと、20歳なりのぽつぽつとした言葉だけれど聞くことができて良かった。先の見えにくい生きにくい世の中かもしれないけれど、自分らしく今を生きてほしい。好きなことを突き進めてほしい。母の願いはそれだけであります。GOOD LUCK!
